どうも、こんにちは。
いまだに待機児童の緒方です。ご機嫌いかがでしょうか。
【ご無沙汰しております。5年間ご連絡が滞ってしまい、誠に申し訳ございませんでした】
不意に当店へメールしてくださったのは、五年ほど前に出品していただいてた作家様。
急遽音信不通になってしまったので、何か事件に巻き込まれていたのではないか心配していたが、
どうやらそういう事情じゃなくて一安心した。
緒方【いえいえ、全然大丈夫ですよ!連絡ついてホッとしました!無事で何よりです。
当時の作品を保管してありますが、さすがに劣化しておりますのでこちらで処分しますか?】
とメールをすると、直接当店に引取りに来られることに。
来店すると、開口一番で律儀に謝罪いただきました。
緒方「僕が言うのもなんですが…。
関係が気まずくなって疎遠になった場合、そのまま連絡しない方が楽な気がするんですけど、
どうして5年ぶりに来店してくれたんですか?」
そう尋ねると、作家様はこう答える。
「色々と過去の清算をしようと思いまして。
私生活で本当に色々な辛いことがあったから、新しい一歩を踏み出すためにも、
不義理してしまった所に一軒ずつ直接謝って回ろうと決めたんです」
なるほど。
ケジメを付けることで、過去の自分自身と決別することにしたんだな。
簡単なようで、すごく大変なことだ。
緒方「またいつでも遊びに来て下さいね!」
そう伝えると、作家様は少し悲しそうな表情で、
そしてややはにかんだ笑顔を見せたのが印象的だった。
そうか、もう5年も経つのか。早いなぁ。
確かあのタイミングでご懐妊なさっていたから、お子さんは5歳くらいになるのかな?
色々と大変だったんだろうなぁ。
「過去の清算、か…。」
そう呟いてアイスコーヒーを手に取ると、かつての旧友との記憶が蘇る。
あいつは今頃元気にしてるだろうか。
緒方「あの時は本当に申し訳なかったな…」
-高校3年 冬-
しんしんと優しく降り注ぐ夜の雪が、
高校3年3学期という穏やかで優しいひと時を包み込む。
卒業を控えた僕たちにとって、あまりにも短い限られた時間。
進学して散り散りとなるまでに、何気ないこの一瞬こそがまるで一生のようだった。
S君「おい、ガッチ!(緒方のこと)早く来いよ!」
K君「銭湯閉まっちゃうぞ!急ぐぞ!」
意味もなく道路標識のポールを蹴飛ばし、緒方は自転車を加速させる。
年甲斐もなくはしゃぐ哀れな3人の男子高校生に華を添える粉雪は、
神様からの一足早い卒業祝いだったのだろうか。それとも…
K君「やっと着いた!さみーよ!!」
S君「早く風呂であったまろうぜ!」
僕らは暖かい湯船の中で、安らかなひと時を迎える。
そう。この時までは。
あの時、僕はなぜあんな発言をしてしまったのだろうか。
「過去をやり直す」
その選択肢がない、不可逆で理不尽な世界に生まれ落ちたことを、
この運命ごと呪うだろう。
これまでも、この先も。
緒方「この穴に自分のって入ると思う?」
場が一気に張り詰める
緒方「もし入れられたら、ケロリン一個につきガリガリ君一本おごってあげようじゃないか」
男子高校生にとってのその行為は、
恥と外聞、そしてなにより指定校推薦を捨て去った裏切り行為そのものである。
しかし男たるもの、一度は気になっていたのも事実。
まさにプライドと名誉を天秤にかけた悪夢のような愉悦を、
緒方は、ついぞ発してしまったのである。
S君「この中で一番強え奴はどいつだ?俺だろ。
俺が相手になってやる。ケロリン全部持ってこい」
そう嘯くS君の背中はいつもより大きく感じ、
ホクロの形がまるで北斗七星のように輝いていた
緒方「ケンシロウ…本気か?」
S君「もし俺の身に何かがあったら、ユリアを頼む」
緒方「任せてくれ」
K君「じゃあ早速行くぞ。一個目!」
S君「オラァぁぁ!!!」
かくして、未来の見えない絶望的な輪投げが始まった
緒方「やった…成功だ!」
K君「すごいぞ!!」
S君「見直したか?勝手に尊敬しろよ」
K君「よし、次2個目いくぞ!」
S君「あ、ちょっと待って…」
なにやら様子がおかしい。
S君「これ…外れなくない?」
場の空気は一変し、戦慄が走る。
S君「この…なんというか、『ねずみ返し』の部分が引っかかって外れない気がするんだけど」
※ブログの途中ですが、上の画像は一切内容と関係がありません。
緒方「やばい!ちょっと血が溜まって青くなってきてないか!?引っ張っても抜けない!」
S君「痛い痛い痛い痛い!!!助けてくれ!!」
K君「そのよくわからん膨張を止めろ!」
緒方「良いこと考えた!ボディソープを大量につけて、指輪みたいに滑らせて抜くんだ!」
S君「だめだ!悪化した!!」
K君「そのよくわからん膨張を止めろ!!」
緒方「やばい、とりあえずJAFに電話してレッカー呼んでもらおうぜ!」
K君「バカ!違うよレスキューだよこういう時は!」
緒方「レスキューの電話番号わかる!?」
K君「わかんない!いかにも緊急っぽい感じの電話番号だろ?0120-444-444とかじゃないの?」
緒方「それドモホルンリンクルじゃね?」
そのとき閉店間際だったので、更衣室から店員さんが近づいてくる気配を察知した。
残された時間は少ない。
緒方「うあああああ!もうだめだ!二人で一斉に違う方向に逃げようぜ!」
K君「ばか!とりあえずタオルでS君の股間を隠せ!」
緒方「あ、ごめん。さっきあっちの方になんとなく投げちゃったよ」 S君「クソ緒方!!」
緒方「俺に考えがある!とりあえずうつ伏せになるんだ!」
ドアが開く。
店員さん「あの、そろそろ閉店ですが…何やってるんですか?」
緒方「あ、彼はちょっと舞空術の練習を…」
緒方の咄嗟の発想も虚しく、店員さんに抜くのを手伝っていただきました。
-現在-
緒方「あの時は本当に申し訳なかったな…S君と、K君」
この場を借りて謝罪致します。
S君へ。
ガリガリ君を奢るの忘れてごめんなさい
そしてK君こと、片平君へ。
全然関係ないけど「キャタピラ君」って呼び続けてごめんなさい
僕の中の過去の清算は済んだだろうか。
これで、明日からまた新しい一歩を踏み出せる気がします。
-fin-