-2016年某日-
社長「ねぇ緒方くん。医療用の椅子を作りたいんだけど設計手伝ってくれない?」
緒方「いいですね!是非やりましょ」
現場上がりの社長はものづくりが大好きだ。
御年70を超えるけどまだまだ元気。
この日も良いアイディアを閃いたからCADを扱う緒方に相談を持ちかけてきた。
社長「お医者さんのオペが長丁場になっても疲れないように工夫してみたんだよ。ちょっと変わった形してるでしょ?この形が今回のアイディアなんだ!」
緒方「なるほど、面白いですね。これを商品化するんですか?」
社長「うん。そのうち特許をとって日本中で売ってみたいなぁ」
確かに、アイディアは面白いんだけど椅子のデザインがもう少しかな…。
それに特許が取れたとしても、このままじゃ予算と単価の折り合いがつかないかもしれないなぁ。
でも社長の夢を叶えたいな。
緒方「長丁場になるなら座り心地のいい椅子が必要ですね!他にも良い椅子の候補があるかもしれませんよ?」
社長「そうかーわかった。カタログ持ってくる!」
特許を取るためには、まず弁理士に相談して既存の権利と被っていないか調査をする必要がある。
しかしその弁理士費用がとても高く、特許取得で別の費用、さらには年間でも維持費用がかかる。
そこから商品化を考えたら膨大な資金や時間が必要になるし、もし売れなかったら目も当てられない。
社長「よーし、椅子のデザインを含めてもう一回考えてみるよ!」
ものづくりする人にとって特許は一つのステータス。
社長はやりたいことをやるタイプだし、そういうとこが好きだから俺にできることは何でも協力する。
でも本来の手順を踏むとしたら、サンプルを作って消費者の意見を聞くのが先なんだろうなぁ…。
お客さんの意見を聞く機会ってあまり無いし、産業フェアだって頻繁にやってるわけでもない。
自分の作ったものや発明品を、気軽にお披露目できる場所があったらいいな…。
-月日は流れ、2017年 某日-
部長「お疲れ。緒方くん、次回からISOの監査頼もうと思ってるんだけどいい?」
緒方「いいですよ!あ、でも俺会社辞めますよ?」
あ、口が滑った
部長「えぇ!?そうなの??何も聞いてないんだけど…」
緒方「ごめんなさい。最初から働く期間を決めていたんです。半年後に辞める予定なので、その間に引き継ぎもしっかり済ませます」
部長「そ、そっか。わかった…」
言うタイミング間違えたかなぁ…。
でも後には引けないな。部長すいません…。
社長「部長から聞いたよ。うち辞めちゃうんだって?」
緒方「色々とお世話になったのにもかかわらず、本当にすみません。どうしてもやりたいことがありまして」
社長「何をやりたいの?」
緒方「自分で作ったものを第三者に見てもらえるお店です。特許取得はお金がかかるから、その前段階でお客さんから評価をもらえるような、気軽な感じで出品できる場所が需要ありそうなので、そんなお店を作ろうかなと思ってます」
社長「へぇ、そういうのも面白そうだね。あ、医療用の椅子作りは誰かに引き継いでもらうことにするよ」
緒方「ありがとうございます。お手数をおかけします」
(この時のやりとりは第24回 経営者たるものに続きます)
さて、あと半年の猶予をもらった。
早速店舗物件を見つけないとな!
こうして緒方の店舗物件探しは始まった。
しかし、予期せぬトラブルに巻き込まれることを緒方はまだ知らない…